梅乃宿

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新しい酒文化を創造する蔵07 酒蔵のおと

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梅乃宿の蔵人が独自の視点で、新しい酒文化をお伝えするコンテンツが始まります。私たちの酒造りに対する想い、梅乃宿の日本酒の楽しみ方など、梅乃宿の酒造りの現場から聞こえてくる「酒蔵のおと」を言葉に変えて、日本酒を皆さんに気軽に楽しんでいただける、リラックスしたコラムを佐伯麻優子が定期発信していきます。


vol.5 「梅乃宿流 おいしい燗酒のススメ」

img01-1まずは思い出話をひとつ。
入社前、年末の繁忙期に研修を兼ねたアルバイトで一週間ほど蔵に泊まったときのこと。生まれて初めての肉体労働に初日からへとへとでした。作業が終わって夕食時、びっくりしたのが「ヤカンでつけた燗酒」。自分で燗酒をつけたこともなく、飲んだこと自体あんまりでしたが、湯せんで温めるものだと思いこんでいたので、ヤカンに本醸造がたぷたぷとそそがれ、コンロで直火にかけられる光景は衝撃的ですらありました。熱々の酒が各自のグラスにつがれ、頭(かしら)(杜氏の補佐役)の「お疲れ様でした」の合図で乾杯して、恐る恐る一口。……「今までで一番おいしかったお酒はなんですか?」と尋ねられたら、「蔵の食堂で初めて飲んだお燗の本醸造です」と答えます。寒い夜、疲れた体にこれ以上の薬はなかったかもしれません。今回はそんな「おいしい燗酒」について。

燗酒って、あんまりいいイメージない?

特にお若い方はお燗になじみがないかもしれません。1990年代の吟醸酒ブームで「冷やして飲む」ことが一般的になったのに反比例して「温めて飲む」ことが減っていったようです。でも酒に限らず、冷たいものより温かいものの方が体にいいことはよく知られていますよね。それに温めた方が甘味や旨味(アミノ酸)をより感じやすくなるそうです。
また、温めた方が早くアルコールを吸収するので、冷酒ほど飲んでから酔ったと感じるまでのタイムラグがなく「知らないうちに深酒しちゃった」というハメになりにくいです。
あとはリラックス効果。特に前述のようなうんと寒くてちょっと疲れたな~という日は、一口飲むと思わず「ほうっ」とか「あぁー」とか、お風呂につかったときのような声が出て一瞬にしてくつろいだ気分になります。あたたか~いコーヒーやお茶などは「ホッ」と一息つくことはできても、あそこまで胃から体中に染み渡っていく感覚は得られません。不思議なことに。

お燗をつけるのって難しい?

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冒頭のヤカンで燗をつけるのは温度の上昇が早い分、慣れないと熱くしすぎるかもしれません。例えば蔵人みんな大好き本醸造は55℃の「飛び切り燗」が適温です。今は温度計を使っていますが、昔はそそぎ口からあがる湯気の立ち具合を見たり、一旦火から上げて底を指でトントンと触って温度を探ったり、蔵人銘々が職人技でつけていました。でもこれを文章で伝えるのは難しい……。
そこで温度をゆるゆる上げられる湯せんの仕方をご紹介します。

用意するもの
お湯・・・やかんでも鍋でも電気ポットでも電気ケトルでもお湯が沸けばなんでも
酒器・・・ちろりでも徳利でも片口でも耐熱ガラスでもなんならビアマグとかでも
※「実験っぽく」するならぜひ温度計をご用意ください

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    1.お湯を沸かす
    ・・・沸いたら加熱を止める
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    2.酒器に酒を入れてお湯につける
    ・・・酒はお湯の液面より下になるように
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    3.好みの温度になるまで待つ
    ・・・酒の量によりますが結構早いです
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    4.おちょこなどについで飲んでみる

思ったより簡単じゃないですか? この方法のいいところは、キッチンで立ちっぱなしにならなくても卓上コンロを用意しなくても、お湯を沸かして食卓についてじっくりつけられるところではないでしょうか。アルコールの沸点78℃までにはなりにくそうですし。

もっと早く簡単に? では電子レンジでしょう。日本製の電子レンジならたいてい燗をつける機能がついてますので、容器に入れてセットして「ピーッ」とか「チンッ」とかいうのを待つ、だけ。簡単。湯せんに比べて冷めるのが早いので一回の量は少なめで。
手軽でいいけどちょっとは凝りたい方、いろいろ工夫もできます。徳利は首の細くなったところが集中して熱くなるので、寸胴の片口などのほうがいいかも(電子レンジのお燗専用徳利もあります)。そばちょこや大ぶりの湯のみや耐熱ガラスはそのまま飲めて便利です。あまり風情を気にしないならもちろんマグカップもありです。
アルコールや香りが飛ぶかも?と気にする方はラップを。上下で温度差が出ちゃいますので、電子レンジから取り出したら容器を軽く回して混ぜてください。箸とかマドラーとか棒状のものを挿して加熱するのも温度ムラが少なくなります。少しずつ秒数を増やしてみておいしい燗になる時間を見つけたら、次からは温める前の酒の温度、容器、ワット数など同じにしてすると再現性が高まります。

何度くらいがいい?

お燗の種類 温度範囲
熱燗(あつかん) 50~55℃
上燗(じょうかん) 45~50℃
ぬる燗(ぬるかん) 40~45℃
人肌燗(ひとはだかん) 35~40℃

まず燗に向く酒かどうか……というところですが。「酒蔵のおとvol.2」でご紹介したタイプ別にみると、一般的に『香りの高いタイプ』や『軽快でなめらかなタイプ』は常温か冷やした方がよく、『コクのあるタイプ』や『熟成タイプ』は飲用適温帯が広いとされています。が、向かないとされているタイプでもおいしい燗になることはあります。これはやってみないとわかりません。先入観は捨てて実験感覚でとりあえず温めてみましょう。表にあるように、始めはぬるめから5度ずつ上げてちょっと味見してみてください。「あ、おいしくなった!」という温度を見つけるのはかなり楽しいですよ。

燗にして更においしくなる酒をさして「燗上がり」という言葉もあるくらいです。お酒が温度によって化けることを知らないのはもったいなさすぎでしょう。まだ寒いうちにぜひチャレンジを。

本醸造

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燗をすることで味わいが深くなる、蔵人の晩酌酒。
ほんのりとした香りとほどよい旨みが特徴の晩酌酒。個性を抑え、そのぶん食事がすすむ味わいを目指し、さらに燗にしてより味わいが深くなるように、 麹、蒸し米、仕込水の比率に工夫を加えました。毎晩飲んでも飲み飽きない、コストパフォーマンスに優れた梅乃宿の定番酒です。常温から燗でお楽しみください。