酒を造るということは、日本の文化を継承するということ。 酒文化の伝道する梅乃宿のポリシーをご紹介します。
SEASON 02
酒造りの担い手たち
vol.5 生物が力を発揮する発酵技術。この力を開発に活かしたい。
商品開発部 石塚 好
開発部では、主にリキュールの開発業務に取り組んでいます。大学時代は酵母を使った研究を、大学院時代は植物の研究を行っていました。もともと食べることが大好きで、食品業界に就職したいとは思っていたのですが、日本酒に特に思い入れがあったわけではありません。ところが、梅乃宿の説明会で大吟醸を飲ませていただいたのをきっかけに、米と麹と水だけでこんなにおいしいお酒ができることに感動し、日本酒の造りに関わりたいと考えるようになりました。入社後は営業の補佐や蔵での日本酒造りを学び、その後は念願の商品開発に携わっています。
梅乃宿の開発部の魅力は、会社からこういうお酒を開発してくれとは言われないこと。おかげで研究の自由度が高く、さまざまな可能性を試すことができます。ただ、その分自分で考えて開発しなければいけないので、インターネットやテレビ、雑誌などから幅広く情報を得て、知識量を増やすようにしています。経験を積み重ねるうちに、開発をするためには、世の中の流れに敏感であることが必要だということもわかってきました。情報、知識、経験を蓄積し、その時点で自分に何ができるかを考え、常に新しい可能性に挑戦しています。
果物の味をベースに、おいしいお酒を目指して日本酒や甘味、酸味などを足し算していくリキュールの開発に対し、日本酒には発酵という技術が必要です。この発酵を主導しているのが、麹や酵母などの微生物。開発の過程でその力を利用することにも挑戦していますが、意図したものとまるで違うものができたり、想像以上の旨みや深さが出たりして、生物が持つ力の大きさに驚いています。日本酒造りの場合、同じ米、同じ水を使用しても、麹が違えば出来上がるお酒の味は大きく異なります。ここでも麹という微生物が、力を発揮しているのです。日本は古来から味噌や醤油など、発酵技術を活かしてさまざまな食品をつくってきた国。この生物の力を利用した新しい商品がこの開発部から生まれる日も、遠くないかもしれません。
商品開発をするうえでこだわっているのは、実際に商品化することをしっかり見すえて開発するということ。新しいアイディアが次々と湧いてくるなかで、梅乃宿がやってきたこととかけ離れていないだろうかと、まず自問自答しています。流れに沿ったうえで新しいものを目指すのは、突飛なものを考えるよりもハードルが高いのですが、
自由に研究をさせていただいているからこそ、ある程度の冒険心と商品開発部の一員としての責任を高いレベルで両立させたいと考えているのです。
一年前に新しい酒文化の創造というフレーズを耳にした時は、大変なプレッシャーを感じましたが、やがて、それだけ期待をしていただいているのだとポジティブに捉えることができるようになりました。そもそもお酒は、人に楽しい時間を提供してくれる飲み物。おいしい食事とおいしいお酒があれば、それだけで人は笑顔になれます。梅乃宿が提供する新しい酒文化を縁の下で支え、人びとに楽しい時間を提供する商品を開発できるよう、これからも頑張っていきたいと思っています。