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梅乃宿のパイオニアたち

酒を造るということは、日本の文化を継承するということ。 酒文化の伝道する梅乃宿のポリシーをご紹介します。

SEASON 04

梅乃宿ストーリー

第2回 【あらごしれもん編】国産レモンへのこだわり

梅乃宿の「あらごしシリーズ」は、果実を贅沢にブレンドした日本酒仕込みの果実酒。昨シーズン、シリーズに仲間入りした「あらごしれもん」は、発売と同時に大人気となり、今期も高い評価をいただいています。梅乃宿ストーリー第2回は、「あらごしれもん」における国産レモンへのこだわりを担当者に聞きました。

 

製造部リキュール製造課:大川 篤史

 

———「あらごしれもん」の中には、さまざまな形でレモンが入っていますね。

大川:はい。リキュール用純米酒と醸造用アルコールに、レモン浸漬酒(しんせきしゅ)、レモン果汁、レモンミンチ(クラッシュ)をブレンドし、砂糖と国産蜂蜜を加えてやさしい甘さを出しています。レモン浸漬酒を自社製造し、果汁やミンチを加えることで、レモンの本格的な香りと味わいを実現しているんですよ。

———このレモンの調達を担当されているのが大川さんですね。

「あらごしれもん」の開発がスタートした時からプロジェクトチームに加わっていましたが、プロトタイプを製造する時に原材料を調達するのは開発の仕事なんです。この頃は主に果汁問屋さんを対象に、情報収集に努めていました。本格的に調達を担当するようになったのは、製造・販売が決まってから。この時は、座談会(第1回 発売までの舞台裏)でも話題になったように、レモン果汁が手に入らなくて大変でした。

———プロトタイプを試飲された時は、おいしさを感じなかったとか…。

そうなんです。もともと、「なぜ今レモンなんだろう?」という疑問を持っていたこともあり、プロトタイプをストレートで試飲した時には、味の濃さと酸味の強さが気になって感動を覚えることはありませんでした。むしろ、このリキュールに「あらごし」のブランドをつける意味があるのだろうか?と考えてしまったほどです。その後、開発者にお湯割りを勧められ、懐疑心を抱きながら試飲したのですが、そこで初めて想像を超えた飲み方と味に驚愕することになります。ストレートでは甘くて酸っぱくて濃いと感じた味が、お湯割りにすることで香り高くやさしいレモンのお酒になる。まるで自身の懐疑心がお湯によって溶けていくように、瞬時に「あらごしれもん」のファンになったのを覚えています。

———しかし、調達にはずいぶん苦労されたそうですね。

はい。レモンの調達が大変だと聞くと、不思議に思われるかもしれませんね。確かにレモンは多くの飲料やスイーツに利用されていますが、実は国産のレモンというのは驚くほど生産量が少ないんです。梅乃宿の「あらごし」シリーズは、可能な限り国産材料を使っている点がこだわりなので、「あらごしれもん」でもここは譲れないと考えました。

レモンをじっくり漬け込んだ浸漬酒、レモン果汁、レモンミンチ。「あらごしれもん」には形の違う3種類のレモンがブレンドされています。このうち、もっとも調達が大変だったのが、レモン浸漬酒に使うレモンの皮でした。初回製造時は何とかなりましたが、追加で製造が決まった時には、初回以上のレモンの皮が必要になりました。1社だけでは必要量を調達できなかったため、複数のメーカーさんと交渉を重ね、レモンの皮を買い付けました。しかし、レモンは、産地やメーカーによって皮の色が大きく異なります。追加で調達したレモンは皮の色が濃く味への影響を心配しましたが、試作を繰り返した結果、色も味も問題ないことがわかり、無事製造にこぎ着けることができました。この時、天然の材料を使うことの怖さを実感しました。

———苦労して発売にこぎ着けた「あらごしれもん」ですが、反響はいかがですか?

おかげさまでご好評をいただき、今期分は完売しました。すでに来期の製造に向け、今期よりも多くのレモンが調達できるよう交渉しました。来期も、そしてその先も、多くの方に「あらごしれもん」の味わいと香りを楽しんでいただけるように、先を見越した調達を続けていきたいと考えています。

———「あらごしれもん」のプロジェクトチームに加わったことでプラスになったことは?

梅乃宿のリキュールは、ロックやソーダ割りをベースに考えた商品がほとんどです。しかし「あらごしれもん」は固定概念に囚われず、お湯割りを念頭に置いたことで実現した味でした。レモンは爽やかな味と香りから夏を思わせる果実ですが、お湯割りを提案することで、冬の飲み物としても好評をいただきました。今回のチャレンジによって、飲み方一つでお酒の印象が変わること、我々はその飲み方も提案していかなければいけないことを学びました。

———今後の目標を教えてください。

自分の中での「あらごしれもん」の位置づけは、「あらごし」シリーズの中の新商品であって、まだ定番ではありません。すでに認知度の高い「あらごし」シリーズに新商品を加える場合は、お客さまの想像を超えるような新しさと、10年間売れ続ける商品力が必要だと考えています。それは、世の中にないものをつくり出してきた梅乃宿の使命でもあるんです。「あらごしれもん」の場合、お湯割りという飲み方を提案することによって新しさを打ち出すことはできましたが、定番として定着するにはもう少し時間が必要です。これを定番という位置づけに持っていくことが、当面の目標ですね。

さらに、発酵という分野にはまだまだ可能性が秘められていると思っています。梅乃宿のお酒をつくった時に発生する米ぬかや果実の残渣といった副産物を使って新しいものがつくり出せないか。今後は、そうした研究にも取り組んでいきたいと考えています。